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2011年 10月 25日
上.中.下巻からなるケン.フォレット著「大聖堂 果てしなき世界 ソフトバンク文庫」は、計2012ページという膨大な物語であったが、主人公たちの赤裸々な生き方に共鳴したり困惑させられたり、また、期待感に胸を膨らませたり絶望感に襲われたりしながら、著者の世界にずんずんと引きずり込まれ、一挙に読み終えた。
シャーリング伯爵ローランドに渡たしてくれと、イングランド国王.エドワード二世から「密書」を託された騎士トマス.ラングリーが、致命的な深手を負いながら追っ手を殺害し一命を取り留める。偶然、入山厳禁のキングズブリッジの森に来た村の子供たちが、この一部始終を凝視していた。騎士は、その内の一人マーチンに「自分が殺されたら、この密書を開け。それまでは絶対に口外しないと約束せよ」といって、木の根元を掘らせ埋め隠した。謎めいた言葉を残して、騎士は去っていった。 混沌とした12世紀初頭の中世ヨーロッパの世情を背景に書かれた前作「ダークエージ.ロマン 大聖堂(全8話/映像)」から200年後の物語の舞台として、再びキングズブリッジが登場することになる。 1327年11月の森の出来事から始まるこの物語は、イングランド一の高さを誇るキングズブリッジ修道院の尖塔が完成する1361年に至るまでの34年間、精神世界を支配する修道院や実生活を左右する領主、職人たちの食い扶持を牛耳る聖堂区ギルドなど、動かざる石のような保守的な社会に迎合したり逆に利用したり、反発したり改革を打ち出したり、波のように打ち寄せてくる数奇な運命に遭遇しながら、果敢に生き抜いた“前作主人公たちの末裔”の物語である。 児玉清氏(俳優.今年5月16日没)は、あとがきで「男女四人の波乱万丈の中世.長尺ロマンである」とで述べておられる。※長尺物 <映画> a long picture 登場する「森の子供たち」のプロフィールを掘り下げながら、少し長くなるのだが、物語の筋を追ってみよう。 森の子供たちとは、裕福な羊毛商のエドマンド.ウーラーの長女カリス(10歳)。騎士サー.ジェラルドの長男マーチン(11歳)と二男のラルフ(10歳)。労働者の父親を持つ長女グウェンダ(8歳)である。筋書きに濃淡をつけるため、グウェンダの兄のフィルモン(12歳)と謎の騎士トマス.ラングリーを加えることにする。 《カリスのプロフィール》 カリスは活発で機知に富む利発な娘。前作「大聖堂」のヒーローである建築職人トム.ビルダー長女マーサの子孫である。医者に憧れるが、中世ヨーロッパでは叶わぬ夢。しかし彼女は、その禁制と妥協せず、密かに、女治療師マティ.ワイズ(勿論モグリ)に治療法や調剤法の指導を受ける。この彼女の姿勢が修道院との間に軋轢や摩擦を引き起こす。 カリスの父親エドマンドの姉ペトラニッラの長男.キングズブリッジ修道院長ゴッドゥインは、ロンドンの大学を優秀な成績で卒業し幼少の頃から志していた修道士となる。が、この世界に入ってから保守的な原理主義志向を強め、カリスと何度も全面対決することになる。マーチンとの結婚式を明日に控えたカリスは、修道院長ゴッドゥインによる魔女狩りの罠にかかり絞首刑を言い渡される。しかし、刑の執行寸前に女子修道院長マザー.セシリアの機転で修道女となり、難を逃れたが、マーチンとの結婚は諦めざるを得なった。 第一次のペスト襲来時、ゴッドゥインの精神的な支柱であった母親ペトラニッラが見るも無残な死に方をする。彼はそのショックから立ち直れずいたが、ある新月の夜、女子修道院の150ポンドの資金や財宝を含めて、修道院の儀式に使う数々の金の燭台などを持ち出し、全修道士を引き連れて夜陰の中に消えた。カリスは「窃盗」の告発をしようと、フランス軍との闘いに参じているシャーリング伯ローランドの二男リチャード司教を追って、シスター.メァーを伴いフランスに渡る。1346年11月のことである。しかし、リチャード司教は既に戦死して望みは叶わず、キングズブリッジに帰ってくる。カリスはマーチンと共にゴッドゥインの隠れ場所を突き止め、財宝の返還を求めて旅立つが、夜陰に紛れて遁走した修道士たち全員がペストの病魔に侵され、ゴッドゥインと共に死んでいた。 カリスは、真摯な介護や臨機応変な献身的な行動、特に、発生からわずか5年間でヨーロッパ全人口の30から50パーセントが死亡したといわれる(2011.10.17朝日夕刊)ペスト禍に対し、マーチンがフィレンツェで見聞きした禍の情報を集め、患者の隔離、リネンのマスク着用、アップルビネガーやワインビネガー(酢)で手洗い励行などを打ち出し、3波にわたるペスト禍を最小限の犠牲者に止めたなどの行動が評価せれ、マザー.セシリアの死後、諸々の困難に打ち勝って女子修道院長を引き継ぎ、ゴッドゥイン亡き後の修道院院長代行を兼務する。 カリスは、やがて女子修道院長を後任に譲り一般市民となる。晴れてマーチンと結婚する。市民のゆるぎない信頼を得て、修道院から独立した“施療所”を建て、聖堂区ギルドのオールダーマンとなったマーチンなどと協働し、ペストや夜盗などから街を守る堅固な防壁を構築し、街の安全を保障するための保安隊を結成し、国王からキングズブリッジの自由都市化の承認を得る。そして、大聖堂に450フィート(約137メートル)というイングランドで一番高い塔を建てる基礎を築いた。マーチンと前妻との子.娘ローラは、カリスとマーチンを苦しめた反抗期を自ら乗り越え、継母のような“医者”になる道を選ぶ。 《マーチンのプロフィール》 マーチンは前作「ダークエージ.ロマン 大聖堂」で、荘厳なキングズブリッジ大聖堂を建て、後に、シャーリング伯爵となったジャック.ビルダーと妻のレディ.アリエナの息子.トマス伯爵直系の子孫.騎士サー.ジェラルドの長男である。ジャックの血筋を引いた彼の才能や知恵や技や革新性は、カリスと同様に、保身と地位に汲々とする修道院院長ゴドウィンや保守的な領主や街の面々から激しい抵抗を受ける。 キングズブリッジとシャーリングの境界を成す川に架かる木の橋が崩れ落ち、通行中の大勢の人々が落下して命を落とす。親方エルフリックの徒弟として経験を積んできたマーチンは、大胆な案“石で建造する橋”を提案する。凄まじい抵抗に会うが、辛うじて設計図は採用されたが、建築工事は街の有力者に奪われる。 カリスとの恋もままならず、橋の建築に携われない心の痛手を癒すために建築先進都市イタリア.フィレンツェに渡る。初めて接する建築物を徹底的に観察.調査し、やがて独立して結婚、長女ローラに恵まれる。建築職人としての評価が高まり、巨大な富を蓄積する。しかし、フィレンツェを襲ったペストは家族全員を巻き込み、マーチンとローラは命拾いをしたが、妻は天国に召される。 再びキングズブリッジに戻ったマーチンは、石の橋に重大な欠陥を見出し補修に成功する。カリスと協働して勝ち取ったキングズブリッジの自由都市化を背景に、国王と交わした「イングランドで一番高い大聖堂の尖塔」の設計を始め、1361年に完成させる。 《ラルフのプロフィール》 ラルフは、性格や体格など兄のマーチンとは悉く異なっている。荒々しく攻撃的な性格を持ち超大型の躯体は対する者に威圧感を与える。川に架かる“木の橋”が崩れ落ちた事件の現場に居合わせたラルフは、偶然、川に落下して瀕死の重傷を負ったシャーリング伯爵ローランドを救助、修道院に運び込む。 小さな時から騎士に憧れていたラルフはローランド伯からスクワイア(騎士見習い)に取り立てられ、騎士に昇進。伯爵への貢献度が功を奏しウィグリーを含む3つの村を統治するテンチ領主となる。地方領主(貴族)は王への忠誠を誓う対価として、封土として与えられた土地とその農民を支配する。家族と農機具の所有は許されるものの、生涯農地に縛られ、領主裁判権に服さねばならないなど、農民の実態は隷農であった。異常なまでに「農民は自分の所有物」との念を深めていった領主ラルフは「森の子供たち」の一人.ウィグリーのグウェンダ(後にウルフリックの妻となる)を「畑の名義をウルフリックに変える」という誘いで館に呼びつけ、その場で強姦する。約束を反故にされた上にグウェンダはラルフの児を宿す。 ラルフは厳しい税の取り立てを続けていたが、またまた村の娘を強姦するという事件を起こす。収まることのないペストの猛威が農民を襲い農地は荒れ放題。相対的に領主の農民に対する力関係が低下する事情などもあって、たまりかねた村人たちがラルフを追い詰め、シャーリング伯爵ウィリアム(ローランドの後任者)に告訴する。シャーリング伯爵ウィリアム夫妻(妻レディ.フィリッパ)はラルフを疎ましく思っていたので、裁判で絞首刑を言い渡す。刑の執行が行われる刑場から逃亡したラルフは、イングランド軍に入隊。持ち前の頑強さと秀でた武闘能力のために、フランス遠征軍(英仏100年戦争)分隊長として抜擢され数々の武勲を立てる。再び、英国王からテンチ領主を命ぜられ、レディ.マルティダ(14歳)と結婚する。 シャーリング伯爵ウィリアムの死は、ラルフに大きな野望を抱かせる結果となった。以前から憧れていた絶世の美女レディ.フィリッパ(ウィリアムの妻)との結婚とシャーリング伯爵の地位である。このために、邪魔となった妻のレディ.マルティダを密かに殺害。あらゆる悪知恵を総動員し伯爵の地位を得る。レディ.フィリッパが妻となることを拒めば、合法的に愛娘のオディーラ(14歳)と結婚することになるぞ、と脅し、目的を果た す。しかし、二人の間には常に暗雲が立ち込めて、レディ.フィリッパは女子修道院に安息の場を求める。この間に、カリスとの結婚の望みを絶たれていたマーチンと出会い、やがてマーチンの子を宿す。レディ.フィリッパは孕んだ子をラルフの嫡子とすべくシャーリングの館に帰へり、いやいやながら体を任すという策に出る。 ラルフは自分そっくりの容姿に育ったウルフリックとグウェンダの長男サム(本当はラルフの子)をスクワイア(騎士見習い)に取り立て、目をかける。ペスト禍の混乱で、農民の自由労働者化が進み、ラルフはウィグリーのウルフリックが懇願していた土地の所有を認めざるを得ない状況となった。「ヤギの皮に書いた証書を渡すからグウェンダ一人で“狩り小屋”まで来い」と命じ(農民は領主の命令を断ることは不可)、証書を渡した後「サムが俺の子だとウルフリックに教えるぞ」と脅し、またもや強姦しようとする。グウェンダがなんとか逃れようとあらん限りの声を出す。その時、小屋のドアを開けて入ってきたのが長男のサム。騎士見習いといえども鍛えたサムの剣がラルフの喉を切り裂き、とどめを刺す。ラルフの波乱の人生が終った。 《グウェンダのプロフィール》 グウェンダは極貧の労働者を父に持つ娘。小さな時から父親の言いつけで財布を抜き取る“スリ”を日課としていたが、年ごろになり、村で最も裕福な土地持ち農家のハンサム息子.ウルフリックに憧れる。ウルフリックは同じ裕福な農家の娘、美貌アネットと婚約をしているのだが、グウェンダは諦めない。女治療師マティ.ワイズに男の情欲を掻き立てる秘薬を処方してもらい、何時も懐に忍ばせてチャンスを窺がう。 父親がグウェンダと牛一頭を交換することを決め、グウェンダは盗賊頭に連れ去られる。その夜、首領に犯されるが、男の短剣を抜き取り刺し殺す。森を抜けて家に逃れるグウェンダが“橋”に差し掛かるところで追っ手に追いつかれるが、その瞬間、橋が崩れ落ち、グウェンダも追っ手も川に落下する。グウェンダは岸に逃れたが追っ手は溺れかけている。グウェンダは流れてきた丸太で追っ手の頭を殴り、川に沈めて溺死させる。 ウルフリックは父親が死亡した折、農地の相続を領主ラルフに懇願する。しかし、単なる農民として農作業をすることは認められたものの、相続は却下された。ウルフリックは一人で農作業をしなければならない羽目に陥った。グウェンダはウルフリックの農作業を助けるために物置小屋に寝起きするようになる。やがて“秘薬”のチャンスが訪れ、グウェンダは長年の夢を実現する。 ラルフの児を孕んだグウェンダは、ウルフリックに本当のことを打ち明けられず、長男サムを生む。ラルフが実の子サムの刃に倒れたという件は「ラルフのプロフィール」で述べたとおりだが、ウルフリックとの間の嫡子ディヴィドは長じて“セイヨウアカネ”を栽培しその根から深紅色の色素を取り出すことに成功。貴重な染料として価値が認められ、財を成す。 無謀極まりない生き方をするグウェンダ。現代の感覚では首をかしげざるを得ない場面が途切れなく続くのだが、どんな逆境をも跳ね返す集中力と知恵で活路を見出す彼女の姿は、この物語の奥行きの深さを知るうえで、ラルフと共に欠かせない存在である。 《フィルモンのプロフィール》 グウェンダより二歳年上の兄フィルモンは、子供の頃から人の秘密を嗅ぎ分ける能力に長けている。掃除人として修道院に雇われたが、その特異な能力で修道院院長ゴドウィンに近づき、修道士に取り立てられる。フィルモンには手に入れた小物を隠しておく「秘密の場所」がある。壁のレンガ様の小さな石に細工がされていて、それを横に動かすと「のぞき穴」となる。施療所の二階にある特別室<祈祷台が置かれ壁に十字架が描かれ、座り心地の良さそうな椅子とストゥールが二脚ずつ置かれ、一方の部屋を男性が、もう一方の部屋を女性が使う>が丸見え。リチャード司教とシャーリング伯爵ローランド実弟の娘マージェリー(16歳)との密会の様子を「覗き見」するなど、徹底してゴドウィンの悪智慧袋と成り下がり、助祭士更には助祭長に上りつめ、修道院副院長に昇進する。 ペスト禍に紛れて、女子修道院の150ポンドに及ぶ資産などを盗み出し夜陰に紛れた事件の首謀者を務めたフィルモンは、ゴドウィンの死後、キングズブリッジ修道院に戻る。ややあって、フィルモンは常套手段を使い修道院院長代理を務めるカリスから修道院院長の座を奪い取る。 フィルモンは院長の座を踏み台にして司教の座を狙いはじめる。マーチンとカリスは、人望も厚く穏やかな考え方をする司教座聖堂参事クロードを次期司教にするように働きかけを強めていたが、大きな野望を抱くフィルモンは、諸々の画策の末、国王から司教の指名を受ける確実な感触を得始めていた。次期司教を指名する儀式が行われる前日、イギリス王エドワード三世の側近.評議会会員サー.グレゴリー.ロングフェローが大司教アンリを伴ってキングズブリッジにやってきた。このままの流れを放置すれば、フィルモンが次期司教に指名される可能性が大きいと判断したマーチンとカリスは、敢然と行動を起こし、フィルモンをフランスの地に永久追放し、クロードを次期司教とすることに成功する。 この大逆転劇を演出したのは「密書」であった。 《トマス.ラングリーのプロフィール》 史実の一片をまとめてみると...。イザベル王妃は、幇間ギャヴスタンを寵愛する夫エドワード二世に対して憎悪の念を深め、1322年、夫エドワードに公然と反旗を翻し国王の処刑を決定。エドワード2世をバークレー城に幽閉し、二人の刺客を送り込む。殺害の危機迫るバークレー城で、必死の思いで書き認めた“息子(後のエドワード三世)宛ての密書”を、一番信頼できる家臣サー.トマス.ラングリーに託した後に、殺害(物語の中では殺害されたのは王の身代わりとされている)される。イザベル王妃はトマス.ラングリーにも刺客を送り込む。 森に中で死闘を繰り広げたトマス.ラングリーは、木の根に密書を隠し、キングズブリッジ修道院に助けを求め、一命を取り留める。そのまま修道士としてカリスやマーチンの危急を救うなど、影の実力者に育っていく。 そのトマス.ラングリーもペスト禍で死亡した。 マーチンとカリスは「密書」に書かれている内容を確認すべく、森の木の根から「密書」を掘り出す。そこには「バークレー城のイングランド国王、エドワード二世から、信頼する家臣サー.トマス.ラングリーの手を介して、愛する長男エドワードに父として愛の手紙を送る」とあった。「密書」とは、エドワード二世から新しい王へのメッセージで、「王妃でお前の母イザベラが刺客を送り込んできが、トマスはが前もって知らせてくれて刺客は殺された。バークレー城の死体は私ではない。非常によく似た他人である。だから、私の死の知らせが届いてもそれは真実ではないと知っておいてほしい。私は母国イングランドを後にするが、もう戻らない」というものであった。 マーチンとカリスは「密書」を元通りに埋め戻しておいたのだが....。 フィルモンかクロードか、次期司教を決するその前夜、マーチンはサー.グレゴリー.ロングフェローを伴って「密書」の隠し場所に行く。しかし、当然あるべき木の根の「密書」は、既に誰かに持ち去られていた。マーチンは「あいつだ!」と直感し、フィルモンの「秘密の場所」を開けると、そこに「密書」が隠されていた。 サー.グレゴリー.ロングフェローは、この「密書」が、現王エドワード三世に返還されることを条件に、司教座聖堂参事クロードを次期司教に指名することを約束する。フィルモンは、フランス.アビニヨン.ローマ法王庁の下役人として、永久追放された。 さて...、森の中に発する源流から6人のプロフィールという小舟に乗って、中世ヨーロッパ世界を大きく蛇行する大河の流れに翻弄されながら、キングズブリッジの自由都市化という河口まで下ってきた34年間の物語の旅は、如何であったろうか。 エドワード二世とイザベル王妃の確執を垣間見ると“事実は小説より奇なり”と言われることは真実だと思うのだが、史実に忠実だとは言い難いのだが、その流れに添って著されたといわれる“大聖堂 果てしなき世界”もまた、“奇なり”と、言えるのではないか。
by c-bridge
| 2011-10-25 17:29
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