娘さん夫婦と旅行に出かけていたご近所の方が「庭の水遣りありがとうね」といって仙台の笹蒲鉾と山形の林檎を土産に持ってきてくれた。仙台空港でレンタカーを借り、平泉や銀山温泉を回わる三泊四日の大旅行からのご帰還である。
誰でもそうだが、旅に出かけた先で気になるのは「庭の鉢植えは大丈夫かな?」と毎日決まった時間に行う水遣りが出来ない事である。お互い様なのだが、留守中に「水遣りは心配しないで、ちゃんとやっておくから」と言ってくれる隣人ほど、ありがたいものはないのである。
手造りを売りにしているだけあって、厚ぼったく大きな笹蒲鉾の味は上々。一個あれば、酒の肴には十分な量なのだ。
なんと美しい気配を醸し出す林檎なのであろうか。
「ほれ、山形の林檎だよ」といって父母の遺影に供えた。食してみると、果肉はやや硬く果汁は豊富だとはいえないが、強い甘さを持ち、酸味とのバランスは抜群。
林檎生産量で全国第4位の山形県、鶴岡生まれの父母も、きっと、四季を通じて林檎を身近に感じながら育ち、陽光を貪って色づく秋の林檎園を、どんな気持ちで眺めていたのであろうか。
よく分らないのだが、この陽光と言う名の林檎は人工交配による品種ではなくゴールデンデリシャスの自然交雑実生だそうだ。種を採りプランターに植えて苗を作り育てていくのだが、品種の特性や品質を確かめたりして一つの商品に育て上げるには、早くて15年、場合によっては25年以上かかってしまうこともあるという。