このごろ山の人たちとのご縁が増えて「三河材まつりに来てみませんか」というお誘いを受けた。
まつり会場は新城市と豊橋市の境あたりなのだが、豊橋から国道151号線を直進し豊川市街を抜け国府・一宮近くで豊川に架かる金沢橋を渡ると柿の産地・石巻町(豊橋市)にでる。
まつり会場に至るまでの県道沿いは、明るいオレンジ色の実をたわわにつけた柿の木が見渡す限り広がり、道端には、段ボールを切り抜いて造られた代金箱と一袋100円の柿が無造作に並べられている。無人販売なのである。
まつり会場に着くと、三河材を売る人や買う人や関係者でごった返している。
「太鼓が始まると直に競りが始まる」と聞いていたが、郷土芸能「長篠陣太鼓」の保存会の若者たちであろうか、勇壮な「清流ながれ打ち」が始まった。深まる秋の山々にこだまする陣太鼓の音は、競り前の景気づけにはうってつけのものである。
競りが始まったが、長さ4メートルに切り揃えられた50年くらいの杉材が12万円から始まり、25万円で競り落とされ、次々と競売にかけられていく。
残念なことに競りの単位が分からないし、仕組みも不案内と来ているからなんとも言えないのだが、50年という年輪を刻んできた杉の大木が、25万円で競り落とされる、こんな価格で良いものなのか、これが木材市場の現実なのか、誠に複雑な気持ちがしたものであった。
帰りに柿を買おうと楽しみにしていたが、無人販売所に車を止めて二袋を手にとり、200百円を出そうと財布を開けると、今日に限ってお札しか入っていない。無人販売所はお釣りを出してくれないのだ。
しかし、豊川市街に入って「待てよ、誰か先客があった場合には代金箱の中に100円玉が入っていた筈、千円札を出してお釣りをもらってこれたのになー」と遅まきながら気が付いたが後の祭り。その代わりということでもないのだが、豊川稲荷門前の稲荷寿司を買って帰ったが、丁度お昼時間、妻と「久しぶりで美味しいね」と言い合いながら山の話や柿を買い損なった話などをしながら、我が家のお昼は静かに過ぎて行った。