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2015年 09月 25日
ファンタジーの作品と聞けば、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」やトーベ・ヤンソンの「ムーミン」、宮澤 賢治の「銀河鉄道の夜」などを思い浮かべるのだが、上橋 菜穂子著「鹿の王」も、壮大なるファンタジーの世界の物語である。
著者は、オストラリア先住民アボリジニを研究する文化人類学者だそうだが、物語に登場する人や王国や動植物や場所の名前が、自分にはかなり読み難く、一、二度目にしただけでは中々覚えられないと感じたのは、大部分は歳のせいだと思うのだが、何か、アボリジニの暮らしの中からヒントを得たものなのであろうか、などと思いながら、上巻「生き残った者」の主人公ヴァンの来し方に想像を膨らませ、下巻「還って行く者」を読み終え、幼い娘が“人”ではなくなったヴァンの後を追いかけて行く、その行く末に思いを馳せ、このファンタジーな物語を、十分に楽しませてもらったのである。 著者は、あとがきで次のように述べている(趣旨) 「人の身体を侵すウィルスが、時として、身体を変化させる役割を担う共生体となり得るのではないかという発想から様々な事象を検証していく“破壊する創造者”という生物進化論に関する本と出会った。この本を読んで、腕を獣に噛まれた際に体内に入ったウィルスによって、徐々に変化していく男のイメージが鮮明に浮かんだ。彼の背中を、懸命に追っていく可愛い幼い娘の姿が見えた時、あ、書ける、と思った」。 アカファ王国・トガ山地で独角(どっかく)という戦士団の頭・欠け角のヴァンは、強大な帝国・東乎瑠(ツオル)に敗れ奴隷となって岩塩鉱の地底深くに囚われていた。ある夜のこと、真っ黒い犬の群れが太い鎖で繋がれているヴァンをはじめ奴隷たちを鋭い牙で次々と襲い、ヴァンを除いたすべての奴隷たちは“謎の病”に侵され死んでいく。腕を噛まれ気を失っていたヴァンは、死の淵から立ち上がり、太い鎖を引きちぎって岩塩鉱から逃げ出す。彼は、奴隷たちの飯を炊きだす厨房の竈の中に隠れていた“幼子ユナ”を伴い、追っ手から逃れる。 しかしヴァンは、今までに感じたことが無い体の異変に気づく。遠くの物音を聴き分け、人や獣の臭いを嗅ぎ分け、遠くにある物をはっきりと見分けられる。更に・・・ オタワル人の天才的な医術師・ホッサルが岩塩鉱で起こった事件の調査に訪れるが“太い鎖を引きちぎった”痕跡から「一人だけ逃れた者がいる」と断定、跡追いの名人サチ(女)に追跡を命じる・・・ 物語は、こんな風にして展開されていくのだが、狩りを楽しむ要人の多くが命を落すなど、アカファ王国を征服した東乎瑠(ツオル)帝国は“謎の病”に苦しめられる。 独角の戦士団は、どんな急峻な断崖をも駆け下りられる強靭な足腰を持つ飛鹿(ぴゅいか)を飼育している。厳しい訓練の後、飛鹿たちは、長閑な草原で休息を貪る。しかし、この草原こそは黒狼熱の病素を宿す黒ダニの一大生息地、アカファ人の子供たちは幼い頃から飛鹿の乳で育てられ、自然と黒狼熱の免疫ができている、が、東乎瑠人は免疫を持たない。 物語には、火馬の民や沼地の民(ユスラ・オマ)、犬の王ケノイや谺主(こだまぬし)スオッツルやワタリガラス、黒狼と猟犬を掛け合わせたキンマの犬や野鼠、アッシミやイキミなどの地衣類(菌類と藻類が共生している生き物)、ミツジ(ダニ)など、聞きなれないものたちが次々と登場し、読む者をぐんぐんと、ヴァンの世界に引き込んでいく。 医術師・ホッサルは、黒狼熱の治療薬を作りつつあるが、ホッサルの義兄トマソルの助手シカンが「黒狼熱の病素を蔓延させる」という恐ろしい企てを実行しようとしている。 これが成功すれば、間違いなく生態系の破壊が急速に進むこと火を見るより明らか、なんとか食い止めようとホッサルやその女助手ミラルが手を尽くすのだが、後手に回る。 死を賭して挑むヴァン、シカンが仕組んだ罠にかかり瀕死の重傷を負うが、彼の魂は犬たちの魂と繋がり、彼の体は黒狼に裏返る。“人”ではなくなったヴァンは飛鹿(ピューマ)・暁(オラハ)と一体となり、シカンに操られ鋭い毒牙で人々を襲おうとする「十四頭のキンマの犬と黒狼」を束ね、一筋の光となって、どこまでも暗く深い森の中に消えて行く。 アカファ・トガ山地には「我が身を賭して群れを守る鹿がいる」という言い伝えがあるのだが、これが、鹿の王なのであろう。 毛皮を纏い弓矢に長ける暮らしぶりなどからは狩猟民族にも見えるし、医術師・ホッサルの言動などから推するとかなり文化程度が高い王国にも見える。果実酒を飲みながら硬いパンをスープに浸して食べる場面や岩塩鉱の奴隷の話からは、中世初期・ヨーロッパの暮らしなどを想起するが、CGを駆使した映画を見ることがあるとすれば、どんな風貌の人たちが登場するのか、非常に興味のある所である。 野鳥から鶏に感染する「鳥インフルエンザ」が大きな社会問題となり、鳥から鶏へ、鶏から人へ、人から人へと感染が広がる可能性が深まっているという警告が発せられて久しいが、韓国を震撼とさせた中東呼吸器症候群マーズは、ヒトコブラクダがコロナウィルスの感染源動物の一つであることが明らかとなり、西アフリカの森に棲む食虫性のオヒキコウモリが感染源とされる「エボラ出血熱」の壮絶なる状況は、毎日のように、TV報道で報じられたことは耳目に新しいところである。 著者が描くファンタジーの世界も、まんざら架空の物語、とは言えないのかも知れない。 余談だが、9月20日の朝日新聞朝刊「しつもん!ドラえもん いせき編」に「弥生時代の人々はある動物を神様の使いとして大切にしていたらしい。どの動物かな」・・・新聞を開いてこたえをさがしにいこう、という質問があった。 2010年1月からスタートした「しつもん!ドラえもん」は子供にも大人にも人気、我が家でも毎朝の楽しみの一つとなっている。今回は2021回目の質問ということであったが、妻と「開いてこたえをさがしにった」ところ、そのこたえは「シカ」・・・「弥生時代の道具にシカのすがたが描かれている。シカの角は春先に落ち、また生えてくることから、農作物の豊作のシンボルと考えられていたようだ」とあった。 文化人類学者の著者は、弥生時代の人々の暮らし振りにも十分なる知見を持っておられた筈、ひょっとして、「弥生時代には鹿を神様のお使いと考えていた」という事から、「鹿の王」という題名を着想したものであったのかもしれない。
by c-bridge
| 2015-09-25 13:47
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