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2019年 03月 19日
騎士団長が予言した「何かに誘われる電話」が気になっていたが、10時過ぎ、雨田正彦から「親父に会いに行くが、一緒に行かないか?」という電話がきた。まりえのことが気掛かりだが「断ってはならん」と言われているので「わかった」と返事をした。
私は黒い革ジャンを着て11時少し前にやってきた彼のボルボに乗り込み、途中小休憩を取り、伊豆高原の鬱蒼とした林の中にある高齢者養護施設に着いた。雨田具彦の部屋は3階で長い廊下一番奥の個室であったが、壁掛時計は2時5分を指していた。 私は、眠っている雨田具彦を見て、真夜中にスタジオに来ていた人物と同じ人だと確信し「あの絵を描いたのは、この人なのだ」と感無量の面持ちでこの偉大なる画伯を凝視していた。 応接セットに向かい合って座った彼は「ユズはボーイフレンドと結婚する気は無いらしい」と言った。私は「お腹の子はその男の子なんだろう?」と訝ると「男も、そこがはっきりしない、と、悩んでいるそうだ」と言ったが、私は黙っていた。 雨田具彦が目覚めたのは3時少し前であった。 彼は吸い飲みで父親の唇を湿らせ「小田原の家に住んでくれている奴だよ」と耳元で言うと、雨田具彦はゆっくりと私の方に顔を向け直した。私は、淡い膜がかかっている彼の眼球の奥底に、明晰な光が潜んでいるのに気が付いた。私は「この不思議な光は、彼が、これから成さねばならぬ事のために、大事に仕舞い込んでいるのだ」という思いを持たずにはおれなかった。 政彦は私に「何でもいいから親父に話してやってくれ」と言うので、私は、肖像画を描いている事や勝手にレコードを聞かせて貰っている事などに続いて、屋根裏部屋の話に差し掛かかると、彼の目のその光が、より鮮明になったように感じられた。 その時、政彦の携帯電話が鳴り「いけない、電源切るの、忘れていた。話が長引くかもしれない」といって、花壇に囲まれた駐車場に下りていった。 ふと気が付くと、背後に、雨田具彦から招かれて来たと言う騎士団長が「ここに来る前に、秋川まりえに会ってきた。彼女をこちら側に取り戻すには、メタファーの道を急がねばならない」と真剣な顔で言い「それには犠牲と試練が伴う。犠牲を払うのはイデアで試練を受けるのは諸君だ」と付け加えた。 「どうすればいいのか?」と聞き返すと、騎士団長は「あの“騎士団長殺し”の絵にならい、帯剣であたしを殺せばよろしい」と言った。私は「それで、まりえの居場所がわかるのか?」と聞き返すと「そうではあらない。あたしを殺すことによって引き起こされる一連の連鎖が、諸君を彼女の居場所に導く。彼女を取り戻す方法は、これしかあらない」と言う。 私は「あなたは、どうなるのですか?」と聞くと「あたしは、環を閉じるために死ぬ。あの絵の“寓意”の核心を再現し《顔なが》をこの部屋に引っ張り出さねばならない」と言った。 ☆寓意=広辞苑 他のものにかこつけて、それとなく、ある意味をほのめかすこと 二人のやりとりが聴こえていたのか、雨田具彦の顔には血色が戻り、眼球を覆っていた淡い膜が次第に薄れ、奥底に潜む神秘的な光が、眼の表面に浮かび上がり、やがて、両方の目がしっかりと見開かれた。 騎士団長はするりと抜いた帯剣を私に渡しながら「今、雨田具彦は、あの絵の“寓意”の核心を見ようとしている。さあ、あたしを刺し殺せ」と、揺ぎ無い強い決意で私に迫った。 気が動転している私は、辛うじて「この剣は小さする」と言うと、騎士団長は「いちばん上の抽斗に、包丁がある」と言うので開けてみると、家の台所から消えた筈の包丁が入っていた。 包丁を振りかざした私は幾度もためらったが、「再生のための死なのだ。さあ、心を決めて環を閉じるのだ」と言う騎士団長の声と共に、私は包丁を騎士団長の心臓深くまで突き刺した。包丁の柄を握った私の両手は鮮血に染まった。 雨田具彦は、ようやく何かの思いを成し遂げたように、とても安らかな表情を顔に浮かべていた。 騎士団長の死よって引き起こされる一連の連鎖が始まった。 曲がったナスのような長い顔をした男が部屋の隅に開いた穴からぬっと顔をつき出し、四角い蓋を片手で押し上げながら、亡骸となった騎士団長を呆然と見つめているのだ。 私は「お前は、秋川まりえの居所を知っているのか?」と詰問すると「全く知らない」という。「お前はイデアの一種なのか?」と聞けば「ただのメタファーです。ものとものとをつなげるだけの暗喩です」と言う。 ※暗喩(広辞苑) 例えを用いながら、表現面にはその形式(何々の如き、何々のようだ)を使わない方法 私は「道を案内しろ」と強く言うと「通路は個々人によって異なる。自分で自分の道筋を 見つけねばならない」と言い「ひとつだけ忠告をして置く」と言って次のことを教えてく れた。 「メタファーの道は暗い長い道なので明りを持って行く事。途中の川は冷たく深くて流れは速く船でないと渡れない。船は船着場にある。順路を誤れば危険極まりない二重メタファーに襲われる」 私は部屋の懐中電灯を持ち革ジャンを着込んで準備が整うと、顔ながの姿が消えていた。「これから試練が始まるのだ」と覚悟を決めて穴の中に入ると、病室は3階の筈であったのに、真っ暗なトンネルのようなメタファー通路は下り傾斜路になっていた。 私は身を屈めながら延々と歩き続けていたが、いくつかの曲がり角を曲がると周りは少ずつ明るくなり、ようやく、岩盤の荒野が広がっている外に出ることが出来た。緩やかであった斜面が急勾配となり、両手両足を使ってよじ登り、ようやく、霞に覆われた丘の頂上に登り付くことができた。 丘の麓から、岩場の間を強い勢いで流れる川の音がしていた。川幅は5、6メートルくらいだが、流れは速く深そうだ。私は、岸辺に屈み込み、手で水を掬って飲んでみたが、無味無臭の水であった。 船着場には、顔の部分が空白になっている顔のない大男が立っていた。私は「向こう岸まで渡してください。秋川まりえという女の子を救うためです」と言うと男は、抑揚のない深く低い声で「送ってあげても良いが、しかるべき代価が必要だ」という。 私は財布を差し出すと「金銭は何の意味も持たない」と断られたので「あなたの似顔絵ではだめですか」と言うと、男は「顔の無い男をどうやって描くのだ?」と木霊のような笑い声が聞こえた。 私はズボンのポケットに入れていたペンギンのフィギュアを取り出して男に見せると「これでよろしい」と言いながら向こう岸まで送ってくれた。 岸に着くと、男は「お前は既に川の水を飲んでいる。これから先は、お前が行動すれば、それに合わせて関連性が生まれていく。いつか、私の肖像画を描いて貰うことでもあれば、ペンギンの人形はそのときに返してあげよう」と言い残し、船と一体になって霞の中に消え行った。 次々と遭遇する試練を乗り越え、秋川まりえを救出し、閉じられた環を開くことが出来るのだろうか。 騎士団長殺し(その8)に続く
by c-bridge
| 2019-03-19 17:43
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