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2019年 07月 19日
平成元年(1989年)に刊行されたカズオ・イシグロ著「日の名残り」は、同国でベストセラーとなったその年に、英国で最も権威ある文学賞「ブッカー賞」を受賞した。その作品が映画化されたのは今から26年前の平成5年(1993年)の事であったそうだが、NHKのBSプレミアムで観て初めて「映画があったなんて、全然知らなかったね」と笑ったものである。
日系イギリス人(長崎県出身)の小説家ということもあって、我が国でも、このノーベル文学賞受賞(2017年)作品は大きな反響を呼んだが、自分が妻に読み聞かせたのは去年8月から9月にかけてあった。読後の感想等は、昨年9月18日のブログ「カズオ・イシグロ著 日の名残り」に詳しく述べている。 英オックスフォードにある壮大豪華なダーリントンホールを舞台にして繰り広げられるこの映画には、特殊な材料使った銀食器の磨き方や扱い方など見逃せない幾つかの場面があるが、テーブルセッテイングのこだわり様は「ここまでやるのか?」と呆れるほど物凄いものなのだ。 燭台やフォーク&ナイフや大皿&小皿やワイングラス類の配置は、スケールを使って決められている間隔がきちんと保たれているか否かを確かめ、各お席のセッテイングに寸分の狂いも無いか、執事による、徹底したチエックがなされる。 事ほど左様に、隅から隅まで目配せして欧米各国からの賓客をおもてなしするのだが、調理場はもとより控の間や給仕担当に至るまで「理想の執事像」に生き甲斐を見出すスティーヴンスの一糸乱れぬ統率振りには「うーん」と感服するしかない。 かつて政府要人や外交使節で賑わったダーリントン邸も、卿が亡くなった後は米国の富豪・名士ルイス氏の所有となり、当時からの使用人たちは去り、老執事スティーヴンスがルイス氏に仕えている。 そんなある日、ミセス・ベン(当時の女中頭ミス・ケントン)からの手紙を受け取った彼は、「直接会って事情を話せば、もう一度、女中頭をやってくれるかもしれない」という職務上の必要性があったことは確かなのだが、それ以上に、「もう一度、彼女に会いたい」という思いの方が強く、主人ルイス氏のお許しもあって、彼女を訪ねる旅に出る。 オックスフォードからイギリス海峡を望むウェイマスの町まで、主人ルイス氏の車を拝借しての四泊五日の旅であった。 町を見下ろす峠でガス欠になり名も無い村の居酒屋に立ち寄るのだが、「ここら辺にはホテルも無いし、もう遅いから、屋根裏で良かったら泊って行ったら」と店の夫妻に親切にされ村人たちとビールを飲み交わす。 あまり他所の町に出掛けた事が無く世事に疎いスティーヴンスは、自分の意見や思いを遠慮会釈なく吐露する村人たちの話しぶりや楽しそうな笑い声に、これまで何の疑いも無く人生の信条としてきた理想の執事像「品格ある紳士」について、「これで良かったのか、これからも、このままでいいのか」という疑問が胸の内に芽生えて来る。 車窓から次から次へと見え隠れする美しい街並や心休まる湖や山々の風景を愛でながら、幾度となく思い出しては後悔の念に駆られるのは、女中頭ミス・ケントンが彼に寄せる思いを、素直に受けようとしなかった、あの日の出来事である。 ホールに勤務する総ての人々、執事にも女中頭にも、夫々の執務室に戻って休憩する時間帯がある。 紅茶を飲みながら「本」を読んで寛いでいるスティーヴンスの部屋に、ミス・ケントンが庭で摘んできたと言って花を持ってくる。彼女は「何の本を読んでいるのですか?」と聞くと彼は「いや、普通の読み物ですよ」と取り合わない。彼女は「いかがわしい本でも読んでいるのですか?」と、冗談交じりで、彼の手から「本」を取り上げようとする。 このやりとりを何度か繰り返すうちに、彼の顔と彼女の顔が、のっぴきならない微妙な状態にまでに接近し、棒立ちのようになったスティーヴンスの手にミス・ケントンの手が触れ、言ってしまえば、決定的な瞬間を迎える。 彼は高鳴る胸の鼓動を打ち殺し、呻くような声で、「一人にして下さい」、と、言ってしまったのである。 やっとの思いで、リトル・コンプトンのローズガーデン・ホテルでミセス・ベン(ミス・ケントン)に再会したが、「初孫が生まれたの、娘の近くで暮らしたい」と、再度の女中頭の話は露と消えた。 二人はウェイマスの桟橋に置かれた長椅子に腰を下ろし、美しい入り日の夕景を眺めていたミセス・ベンとスティーヴンス、そぼ降る雨のバス停留所で別れることになる。 バス停留所で待っている間、スティーブンスは「帰ったら、ビールを飲み交わした村人たちのように、素直に、自分の考えを話せるように、練習に取り組みますよ」と決意を語るのであった。 「ミスタースティーブンス、こんな所まで送って頂いて、ありがとうございました。今日は、お会いできて本当に嬉しゅうございました」「私の方こそ、とても楽しいひとときをありがとう、ミセス・ベン」と、挨拶を交わした。 ウェイマスの町は「旅行者を何日間でも飽きさせない町」として観光客を惹き付け「イギリスの驚異」と言われるくらいの名勝地だそうだが、イギリス海峡に大きな夕日が沈みはじめると桟橋全体に色付き電球が点燈し、詰めかけた群衆がその瞬間、大きな歓声をあげる。 この映画は、かなり忠実に原作の筋書きを映像化しているのだが、最盛期のダーリントンホールと旅先と、それに、当時を想い出す場面が複雑に交差するの。自分たちも映像を見ながら、原作を読んだ時の印象やイメージを想い出し「そうか、実際には、こんな風だったのか」などと回想しながら、興味深く鑑賞したのであった。 執事ティーブンスを演ずるアンソニー・ホプキンスとミス・ケントン演ずるエマ・トンプソンは、共に「アカデミー賞・主演男優賞と主演女優賞」にノミネートされたというが、二人の存在感溢れる演技を通して、最後まで楽しむことが出来た作品であった。
by c-bridge
| 2019-07-19 17:34
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