最初は理論編で「対話とは何か」についての勉強であった。
清水先生の講義は「対話の構造」を中心にすすめられ、学んだばかりの理論を、先生の前で話すのだ。
スピーチの持ち時間(3分とか5分)とホワイトボードと指し棒が与えられる。みんなガチガチで話そうとする内容の3割くらいしか話が出来ない。冷や汗がでる。顔が紅潮する。頭に空洞ができたような気分で手に力が入らないから、板書はまともな字が書けない。
いやはや散々であった。
難行苦行の2時間が終わると、次週までの宿題が出る。テーマとスピーチ時間が与えられる。
会社の行き帰りの電車の中で、つり革につかまりながら「イメージトレーニング」をする。
訓練当日、先生から「それでは一番最初に宿題をやりましょう」と言い渡させれる。
この1週間あれほど懸命にやってきた「宿題」がなかなか思うように出来ない。
スピーチのあと、先生から話の組み換えなど厳しい指導を受ける。組み替えられた「話」をもう一度実際に試してみる。
一番困った訓練は「即題」というものだった。大抵3分スピーチであった。
先生から「では石井さんお願いします」と指名される。「ハイ」といってホワイトボードの前に立ち「皆さん今晩は!」と挨拶しお辞儀をする。その瞬間に先生が、例えば、「梅」とスピーチのテーマを下す。
3分間で「梅」というテーマで一定のまとまった話をする訓練だ。
即題を終えると受講者仲間から意地悪質問を浴びせられる。「あの表現をこのように変えたほうが聞きやすいのでは?」「全部言い切れましたか?」「アイコンタクトをもう少ししっかりとやると良いのでは?」「ゼスチャーを入れると良い」などなど。
この訓練の終了が近づく頃、われわれ5人衆はどんな即題にも落ち着いてお話ができるようになり、対話の理論もほぼ習得することが出来ていた。
このようにしてわれわれは「スピーチインストラクター」のライセンスを手に入れたのであった。
清水先生とのこの出会いが、私の第二の人生に決定的な影響を持つなどということは、この段階では全く想定外のことであったのだ。
では次週をお楽しみに。