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2022年 12月 09日
11月の終わり頃であったが、庭で徒手体操をしている自分の目の前を何か白いものがふわふわと流れていくものがある。なんだろうと掌を差し出してみると指先にふんわりと止まるではないか。子供の頃によく見かけた真綿のような衣で身を包んだ5ミリくらいの雪虫と比べると三分の一ほどだが、多分、彼らの仲間に違いない。生まれ育った故郷を想い浮かべながら暫く眺めていたが「ふっ」と息を吹きかけてやると「ふわーっ」と指先から離れ、黄色く色づいてきた夏ミカンの枝の茂みに消えていった。
晩秋の頃、どこからともなくふわりふわりとやってくる雪虫は「初雪が近いよ」と知らせてくれる雪の国の使者、その頃になると、葉が落ちて裸となった樹々の梢に容赦なく北風が吹き荒ぶ。耳を澄ますと、特に太い枝を広げた古木は、風の向きや強弱によって「ビュービュー、ビュービュー、ヒョーヒョー、ヒョーヒョー」と笛を吹くような音色が冴えわたる。 子供の頃の初雪は嬉しいものであったが、間近に迫る根雪は、春3月まで続く。 当時は毎月21日が月1回の貴重な休み日であったから、ゆっくりと朝寝を貪った後、庭のあちらこちらにふわふわと浮遊する「雪の国の使者」に眼を奪われていると故郷の野山を駆けずり回った子供の頃や母や兄妹のことなどを懐かしく思い出していたが、ふっと浮かんだのが色紙の句である。昭和40年(1969年)11月23日と裏書にあるが、初の出産を間近に控え「健康な児を授けたまえ」と祈り続けていた初冬の朝の句である。 10月中旬から音読をはじめた藤沢周平著『小説の周辺』には「へー、そうだったんだ」と驚く新発見があった。 その一つは、『武士の一分』や『たそがれ清兵衛』などの小説の中で使う架空の藩名・海坂藩は静岡にある馬酔木系の俳誌「海坂(うなさか)」からとったもので、彼は「およそ三十年も前に、その俳誌に投句していたことがある私が、小説を書くにあたって『海坂』の名前を無断借用したのである」と告白?している。 もう一つは、彼の俳句鑑賞の多くが郷里の山や川の四季の風景が語られていることである。 山形県鶴岡市郊外の中学で教師をしていた頃に肺結核に罹り療養生活中に同室の患者さんから手ほどきを受けて俳句の世界に目覚めていくのだが、64編からなる短編集の最後に読売俳壇選者を37年間務めたという長崎県出身の俳人・森澄雄の俳句≪チエホフを読むやしぐるる河明り≫について「素人の感想の域を出ないが」と断わった上で鑑賞文を載せている。 「私がこの句から思い浮かべる場所は郷里山形県の鶴岡である。市内を南から東北にかけて川が流れている。その町に11月がおとずれると、町の上を覆う雲も町の中を流れる川もにわかに暗くなった。ことに夕方、ひとしきりしぐれが降って去ったあとは、町ははやばやと夕闇につつまれ、わずかに西空の端に残る赤黒い雲が投げかける微光が川の上にとどまるだけになる。荒涼とした光景である。森澄雄の句が私の心の中に喚起するのは、そのような初冬の郷里のイメージなのだが、奇怪なことにこの句の中には若かったころの私がいる。私は燈がともる河畔の喫茶店にいて、読みつかれたチエホフからふと上げた眼を、寒々と暮れていく川に投げ入れているのである」とした上で「青春をうたった句は少なくないと思われるけれども、森のこの句ほど、青春の感性をなつかしく定着し得た作品を私は知らない」と述懐している。 これまで、自分のつたない句に鑑賞文などを思い立ったことはなかったが、前掲句「雪蟲や古木の笛も冴える頃」については、初めての児を授かろうとしている祈りの日々の句でもあり「ド素人の感想の域を出ないが」と断わった上で、鑑賞文を試みても良いかもしれない。
by c-bridge
| 2022-12-09 17:32
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