定年退職で蒲郡に転居したその年の夏、対話総合センターの『夏季合宿』が長野市で開催された。
毎年一回行われる『講師会』の対話訓練で、2泊3日の猛訓練が展開させる。
第一日目の昼休み時間に所長の清水先生に電話がかかってきたのだった。
「それは石井さんが良いでしょう」という先生の声が聞こえる。「なんだろう?」と思っていると、電話が終わった先生が「石井さん、名古屋NOMAの大久保課長さんからでね、来年春に営業関係の講座を始めたいというご意向なので、石井さんが良いでしょうといっておきましたよ」
この一本の電話が私のこれから進むべき方向を決したのだった。
夏季訓練が終わり、私は帰着後直にNOMA大久保課長を訪ねた。
大久保課長の提案趣旨は下記のようなものであった。
「今までの営業研修は単発的であったが、その反省も込めて、長期的に取り組もうと考えています。”営業活動革新塾”という名の傘の下に”営業マンの実践行動学”、”リーダーシップ革新と部下育成”、”セールスプロモーション活動の革新”という『営業学校』的な講座にしたいのです」という。
これまで自分単独で一日コースの講座を企画したこともなければ、担当したこともない私であった。
清水先生が企画した研修講座の一部分を担当してきたに過ぎない私にとって、久々に『地獄の鬼』がニヤリと笑う場面に出くわした瞬間であった。
『知らぬが仏の石井』の出番が到来したのだった。何とかなるわいという営業特有の気分がムラムラと湧いてくるのを覚える。
幸運の扉が「ギギー」と開く音が、微か向こうから聞こえてくる。では次週をお楽しみに。